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2007年6月22日 (金)

池波正太郎『梅安最合傘』

今にして思えば、TVの仕掛人と読み物に違いを気づきます。仕掛け料のケタが違うこと。TVでは庶民性を出すためにか非常に安い仕掛け料でした。TVでの仕掛人は何故にあんなに安い金額で人の命がやり取りされるか不自然な面があります。

特に、その後の必殺シリーズにおいて、人を殺めるのに仕掛け料の安すぎる設定は安易な手段を選んだと思います。TVのように毎週仕掛けをしていては、人間の尊厳も低くなってしまいます。TVのテンポはいいのですが、仕掛けをする方も精神的負担が重いはずです。こうした内面的葛藤の描き方が不十分だったと思えます。

読み物は読み手が得心が行くまできちんと説明をします。手軽に読み返すことも可能です。テンポの早いTVは万人が納得する表面的なやさしいストーリーに脚本を組み替えてあります。だから深みがなくなってしまうのはいたし方がないところがあるのでしょう。

冒頭の「鰹飯」では、梅安さんが二人の元締の同時の仕掛けを請負い承知する。大きな矛盾を解決し、両人に対してどのように価値判断をするのかも面白い。誠意を感じるか、疑いを感じるかで人を判断することはよくあることです。誠意を持って付き合いことの大切さを改めて強く感じます。

「殺気」では人を殺めることがないストーリーです。梅安さんの人を見る目の公平さが表れています。目黒不動にお参りした帰りに見た家族を題材にしたお話です。話の最後に、付文を笹屋の後妻の着物の袖口に縫い針で留め置きます。本人は勿論、誰にも気づかれずに警告の手紙が後妻に届いたことになります。作者のどんな子でも公平に優しくしなさいという戒めと豊かになれば心も豊かになりなさいと訴えるものを感じます。

誠意だ誠だと改めて言うと「倫理」になってしまうのでしょうが、物語の中から汲み取っていく読者との語り合いを作者は楽しんでいるようにも思えます。

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